『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を10倍楽しんでください! Vol.12
チャプター4 〔貴重な白 8〕

《48分26秒〜49分10秒》
またまた出てきました。絵を描くときのイメージの大切さ。「私はこういう絵を描きたい!」「こんな絵を飾りたい!」という具体的なイメージを持って描き始めることの大切さを、永山さんは何度も何度も繰り返し言っています。途中で変わってもいい、イメージを持って描くことが大事なんだと。私も生徒さんに同じことを言っています。『モチーフはあなたの絵を描くための参考においてあるだけなんだから、そのものを観察し、よく知ることは大事だけど、イメージもなく“写し取る”だけじゃつまらないですよ』と。モチーフを観ることから出てくる絵の完成イメージをしっかりと意識してその方向に向かって進めていくことが大切だと思います。

《49分10秒〜49分30秒》
前回もでてきた“曖昧にする”行程がここでも効果的です。薔薇の花の影の部分をさらに曖昧にして引っ込めています。それによって光のあたっている部分がより光って飛び出してきますね。ここでは永山さんの解説は一切ありませんので、サラリとパスしそうですが、よく見るといろいろ学ぶべきところがあるんですよ。

永山流 水彩画法

《49分31秒〜51分12秒》
これは非常に重要なお話です。主役をいかにして主役らしく見せるか。ただ手数をかけて描き込んでは逆効果であることは前回書きました。むしろ逆で、主役ほど手をかけない方がきれいだとも書きました。描いていないものがなぜ際立って主役の座に座れるのか。それを説明してくれています。重要なのは“コントラスト”。真っ白な紙のままの花びらの横にある葉が暗ければ強いコントラストが生まれます。それ以外にはそれほど強いコントラストが出てこないようにコントロールすれば、見る人の目はコントラストの強いところに引き寄せられるというわけです。

★★ワンポイント★★
白バックのままでモチーフを描き上げてから、「バックを暗くしたい」という方がいます。最初から決めていたそうです。
そういう時「今からバックを暗くするのはやめたほうがいいですよ」と言います。なぜなら、すでに描かれたモチーフは白のバックに合わせて描いているはずだからです。奥にあるものは白バックとコントラストが強くならないように薄く描いているはずです。そこにあとから暗いバックを塗りこんでいったら、薄く描いたモチーフは確実に飛び出してきます。最初から決めていたのなら最初からバックを暗くしながらモチーフを描いていくべきでした。
奥は薄いのか、暗いのかについては、以前「気付きの水彩日誌」でも“遠くは薄いの?暗いの?”というテーマで書きましたが、一つのヒントが今回の“コントラスト”のお話にあるのではないかと私は思いました。

つづく>>