『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を10倍楽しんでください! Vol.6
チャプター4 〔貴重な白 2〕

いよいよ核心部分の入り口に立ったところでしょうか。私は、この描き出しの数分に“永山流”の極意が凝縮されているように思います。心してお読みください!

《27分38秒〜27分53秒》
ここでも偶然性を活かして描いている永山さんの姿勢がよくわかりますね。モチーフと位置や形が違っても偶然にできたきれいな塩の効果を活かそうということです。つまり目の前のモチーフは、あくまでも作品を作り出すための参考材料であるということだと思います。モチーフが置かれたまま、見えたままをそっくりそのまま描き写すような“受動的”な姿勢ではなく、モチーフをよく観察し知ることから始まって、それを参考にしながら最終的には“自分の絵”を作り出すような“積極性”が大切ということではないでしょうか。
永山流 水彩画法

《27分57秒〜28分20秒》
「まずは主役に近いところから」描いていっていますね。すでに下塗りが済んでいる状態なので、厳密には脇役(バックも含め)も気配としてすでに描いてあるわけですが、“主役”からと敢えて言っているのは全体のバランスをみながら「これを主役にしよう」という意識を自分の中で確認する意味もあって一番最初に筆を入れていくんだろうと思います。でももちろん主役から仕上げていくわけではありません。進めていく順番についてはあとで出てきますのでその時に詳しく見てみましょう。

《28分21秒〜29分00秒》
チャプター4の中で一番重要な部分に入ってきます。ここで永山さんが言っていることは、ある意味で水彩画の本質を見事に表していると思いました。透明水彩とは何かというと、つまりはこういうことなのではないでしょうか。皆さんは「主役は描き込んで、脇役はサラリと描く」と思い込んでいるかもしれませんが、この永山さんの言葉は必ずしもそうではないですよね。
主役に一番きれいな色を持ってきたいなら、主役は白い紙に1回か2回(白いものの場合何も塗らないわけですが)色を置くだけにしておくということです。重ねれば重ねるほど紙の白が見えなくなるわけですから汚くなっていくわけですね。
いくらきれいな色でも下に濁った色があればさらに濁るだけ。この一見常識と反対の考え方が“水彩画の極意”なのかも知れないですね。
永山流 水彩画法

《29分07秒〜30分23秒》
下塗りは終わった時点で“完全に乾かす”ことに触れましたが、ここで永山さんがその理由をよりわかりやすく話してくれています。私も生徒さんから「汚くなっちゃうんですけど・・・」と相談を受けることがよくあります。その時私は「ちゃんと乾かしてから次の色を置いていますか?」と聞きます。さらに「生乾きの時に何とかしようと筆で擦っていませんか?」と聞くとほぼ全員が「はい、耳が痛いです。」と言います。私は水彩画の場合色の塗り方(置き方)は基本的に3つしかないと思っています。ウェット・オン・ウェット(にじみ・ぼかしなど) ウェット・オン・ドライ(重色=重ね塗り) ドライ・ブラシ の3つです。その中間、つまり生乾きをジュクジュクいじリまわすのは透明水彩ではご法度と思っています。

一回で約3分しか進まない・・・。それほど情報満載なんですよ、このDVDは。
これだけの情報を惜しげもなく公開してくれる永山さんに改めて懐の深さを感じています。

つづく>>