『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を10倍楽しんでください! Vol.14
チャプター5 〔細部描写 2〕

《56分59秒〜57分06秒》
一瞬です。ダリアの花びらを描くときの筆使いをよく見てください。このDVDの中でも何度か出てきたと思いますが、永山さんは筆の使い方が実に多様です。他の水彩画の先生方も、私も含めてこんなに筆使いのバリエーションがある作家はいないのではないでしょうか。永山さんを見ていると、水彩画は“絵具を筆で塗る”のではなく“絵具を画面に置く”ものという風に見えます。決して塗りたくってはいませんよね。このDVDを見ればわかるはずです。
永山流 水彩画法

《57分07秒〜58分59秒》
『水彩画は修正できないので難しい』とよく言われます。確かにその通りです。一度塗ってしまったらもう紙の白は戻ってきません。そこのところを肝に銘じておいてこの“激落ちくん”の活用シーンを見ていただきたいと思います。永山さんも言うとおり、消しゴムではないのですから、「これがあれば安心」とばかりにガンガン描いてゴシゴシ消していると決して水彩画らしい絵にはなりませんよ。
マスキングも別な意味で使いすぎ要注意です。どちらも“やむをえない時”に限って使うといいと思います。
永山流 水彩画法

《59分00秒〜1時間00分05秒》
“激落ちくん”使用が効果的で紙にも影響が少ないのはアルシュ(フランス製)だけということも覚えておいてください。他の紙だとちょっと濡らしすぎたり、擦りすぎたりするとすぐにボロボロになってしまいます。ちなみに、ホワイトワトソンやキャンソンはティッシュでもある程度消えます。しかし、ワットマンはティッシュでも落ちませんし、“激落ちくん”では見事にボロボロになります。さらにワットマンは、マスキングが剥がせなくなるので、注意が必要です。紙は色、タッチ、にじみ、ぼかしなどにたいへん影響があり、絵の風合いに多大な違いが出てきます。
私は、絵具より、筆より、画材の中で紙が一番仕上がりに影響すると思っています。“腕”が一番影響力があることは敢えて割愛します(笑)。永山さんのように、時にはわざと使い慣れない紙で描いてみて、思わぬ効果を体感してみるのも大事なことですね。
永山流 水彩画法

《1時間00分52秒〜1時間03分15秒》
『いつ止めるのか』『どこまで描くのか』これは非常に大事なお話です。私も同じですが、『“主役”がやや先行し、“脇役”が様子を見ながらあとを追いかける』これが一番いい方法だと思います。その順番が狂うと自分が何を描きたかったのか、何を表したかったのかがわからなくなったりします。“脇役”が引っ込みすぎても“主役”が浮いてしまうので、“主役”を喰う一歩手前がいいと永山さんも言っています。しかし、以前にも書いたとおり“主役をキッチリ描く”とは決して筆数を多くして描き込むことではなく、あくまでも、脇役やバックとの関係性の中で自然に目に留まり浮き出てくるように描くということです。描きすぎて汚れた“主役”は決してその役を
果たせないですから。

つづく>>