『永山流 水彩画法 -永山裕子 薔薇を描く-』を10倍楽しんでください! Vol.13
チャプター5 〔細部描写 1〕

《51分56秒〜52分16秒》
マスキングを取る時、永山さんは指で取っていますが、私は必ずリムーバー(クリーナー)を使うようにしています。ちょっとした失敗があったからです。沖縄竹富島に仕事で行ってスケッチした時、あの瓦屋根の漆喰のつなぎ部分が特徴的だったので、全部マスキングしておいたのです。7割方描いてマスキングを取る段になりリムーバーを忘れたことに気がつきました。それで指で取っていると指先がヒリヒリしてきたので見てみると、なんと、人差し指、中指の皮が水ぶくれ状態になっているではありませんか!あとで気がついたのですが、(1)暑いので汗をかいて摩擦が大きくなっていたこと。(2)直射日光で紙も熱くなっていたこと。(3)表面がやすりのようなアルシュの粗目だったこと。これらの条件が重なって起きた惨事でした。皆さんも気をつけて。
永山流 水彩画法

永山流 水彩画法
[竹富島で描いた絵]

《52分50秒〜54分23秒》
ガラスの特徴を見つけ出すことが大事です。それはガラスに限ったことではありません。対象をよく観察し、そのモノならではの特徴的なことを見つけて描いていくわけです。答えは一つではありません。見る人ごとに見つけるものは微妙に違うはずですから、自分なりによく見ることが大切です。よく、「ガラスの描き方を教えてください」という生徒さんがいますが、私は「描き方はありません。よく見て描いてください。」といいます。そこには“見方”はあっても“描き方”はないのだと思います。描き方は見つけたものによって変わってくるし、その人の見つけたものはその人の描き方で描くべきだと思うからです。永山さんの描き方、私の描き方、みんな違うから面白いんですよね!
永山流 水彩画法

《54分24秒〜54分58秒》
水の入ったガラスの屈折はとても面白いですね。あと、ぴかぴかに磨いた金属のポットとか。ガラスや光沢のある金属を敬遠する方がいますが、私は、「写っているものや屈折して曲がっているものを探して描けば、自然にガラスや金属の質感になりますよ」と言います。「そうは仰いますけど、、、」と言う声が聞こえてくるようですが、お花や布のような有機的な形ものより、金属やガラスといった無機質でつやのあるものの方がハッキリしていて描き易いと思うのですが。いずれにしても、観察力、洞察力をフルに使って対象を“知る”事が大切です。
永山流 水彩画法

《55分05秒〜56分10秒》

このヘリオターコイズは私も好きでよく使います。私は、単調になった絵にアクセントをつけたり、陰の中に入れて微妙な反射光を感じたりする時につっています。それにしても、色の説明のために別の紙でなく画面の端に塗っていますね。私はこの時「なんでそこに!?」と、驚きましたが、見ていると色の説明のために置いたヘリオターコイズが自然と絵の一部として溶け込んでいくではありませんか。この辺にこの色を決めていたかどうかはわかりませんが、結果、とても効果的なバックの色になっていますね。さすが。
永山流 水彩画法

《56分32秒〜56分52秒》
花瓶の輪郭について、私は「花瓶の輪郭はそんなに強くないですよ。」と言います。光の加減で強いときもありますが、大概の場合、花瓶と花を比べると花瓶は花や葉っぱの陰に入っているので暗くあまりハッキリしていません。永山さんもガラスの花瓶の輪郭は薔薇の輪郭に比べてかなり弱く描いていますよね。実際、そう見えているでしょうし、そう描く事によって花がより目立ってくることも計算に入れているはずです。

つづく>>